G7首脳、原爆資料館を視察し慰霊碑に献花 ゼレンスキー氏も来日し会議出席の見通し

著者 山本 浩

主要7カ国首脳会議(G7サミット)が19日午前、広島市の原爆ドームのある平和記念公園で始まった。岸田文雄首相がG7首脳らを出迎える公式行事で、初めてG7首脳がそろって平和記念資料館を視察した。この間、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が近く来日し、対面で首脳会議に出席する見通しだと、複数の欧米メディアが報じ、ウクライナ政府当局者も認めた。サウジアラビアで開かれたアラブ連盟の会議に同日出席したゼレンスキー大統領は、そこから日本へ向かう見通し。

雨が降るなか、岸田首相と妻の裕子さんが平和記念公園で、G7および欧州連合(EU)の首脳を出迎えた。集まった首脳たちはそろって、平和記念資料館に入った。

日本政府のサミット事務局によると、資料館では岸田首相が展示を説明したほか、首脳らは被爆者・小倉桂子さんと対話した。

G7首脳らによる資料館の視察については、岸田首相が慰霊碑への献花・黙祷(もくとう)だけでなく、原爆と被爆被害について記録を保存展示する資料館の視察を強く望んだとされている。

アメリカのジョー・バイデン大統領など首脳らはその後、資料館を出ると慰霊碑に献花し、黙祷をささげた。広島市の松井一実市長から原爆ドームについて説明を受けた後、記念の植樹を行った。

平和記念公園での式典後、首脳会議会場のグランドプリンスホテルで実質的な討議が始まり、首脳たちは昼食をとりながら協議するワーキングランチに臨んだ。デジタル分野、世界経済、ウクライナ情勢、核軍縮・不拡散などを議論した。

「分断と対立ではなく協調の国際社会へ」をテーマとした最初のセッションでは、冒頭で岸田氏が、「今回のサミット全体を通じての大きなテーマは分断と対立ではなく、協調の国際社会の実現に向けたG7の結束の確認と役割の強化であり、そのための積極的かつ具体的な貢献を打ち出すことだ」と述べた。

「ウクライナへの支援は揺るがない」

ウクライナをテーマをした協議では、G7首脳はロシアへの追加制裁に合意。「ロシアによるウクライナに対する、違法で不当で、何の挑発もないまま始めた侵略戦争に対抗し続けるとという、コミットメントを確認した」との声明を出した。

「ロシアによる明白な国連憲章違反と、ロシアの戦争がそれ以外の世界に与えている影響を、我々は最も強い表現で非難する」、「我々はウクライナの人たちに対して、その喪失と苦しみに全面的な共感と哀悼の意を表明する。ウクライナの人々の勇敢な抵抗に敬意を表する」と首脳たちは述べ、「ウクライナへの我々の支援は揺るがない。ロシアの違法行為が世界に与える影響を最小化していくため、私たちは疲弊することなく努力を続ける」と表明した。

「ウクライナ国家へのロシアの違法な侵略が確実に失敗するよう、本日新しい措置をとる」として、「必要な限りウクライナに経済的、人道的、軍事的、そして外交的支援を提供すると、これまでのコミットメントを新たにする」と述べた。

また、「ロシアとロシアの戦争行為を支援する者が負う戦争の負担を増大させるため、追加の制裁と措置を実施する。さらに、エネルギーの入手可能性をロシアが世界に対して武器化できないよう、我々のこれまでの取り組みとその成功をもとに、さらに対応を続ける」と表明。

さらに、「正義の平和は、ロシアの部隊と軍備の、完全で無条件の撤退がなければ実現しない。あらゆる和平の要求に、これは含まれなくてはならない」と強調した。

核兵器とウクライナのザポリッジャ原発については、「ロシアの無責任な核関連の発言、軍備管理体制の毀損(きそん)、さらにベラルーシに核兵器を配備するという意向の発言は、危険で容認できない」、「ザポリッジャ原発のはなはだしく無責任な制圧について、深刻に憂慮する」と述べた。

各国首脳たちは夕方、宮島(広島県廿日市市)に移動。世界遺産の厳島神社で記念撮影をした。

サミットは21日までで、実質協議が続く。

ゼレンスキー氏来日の見通し

平和記念公園での式典が終わるころに、英紙フィナンシャル・タイムズと米ブルームバーグが、匿名の消息筋の話として、ゼレンスキー大統領が近く日本を訪れ、直接対面でG7首脳会議に参加すると伝えた。

その後、米紙ワシントン・ポストの記者も、米政府筋の話として、同様の内容を伝えた。

さらにロイター通信などによると、ウクライナ国家安全保障防衛会議のオレクシイ・ダニロフ書記が公共放送で、G7首脳会議について「非常に重要なことがそこで決まるため、我々の利益を守り、この国の両何で何が起きているのか明確に説明し提案するためには、大統領が実際にそこに参加することが絶対的に不可欠だ」とし、ゼレンスキー氏の訪日を認める発言をした。

サウジアラビアで開かれたアラブ連盟の会議に同日出席したゼレンスキー大統領は、そこから日本へ向かう見通し。ウクライナ大統領府はウクライナのメディアに対して、ゼレンスキー氏が「数日中に」日本でバイデン大統領と会談すると明らかにした。

ロシアによるウクライナ侵攻後、ゼレンスキー氏がアジアを訪れるのは初めてとなる。

今年3月に岸田首相がウクライナを訪問した際、ゼレンスキー氏をG7に招待。ゼレンスキー氏はオンラインで参加するつもりだと当時の記者会見で話していた。

被爆地・広島でG7サミットが開かれるなか、各国首脳は核保有大国・ロシアに対して、ウクライナでの核使用を強く牽制(けんせい)している。

サミット開始に先立ち各国首脳が、欧州だけでなくアジア・太平洋地域における安全保障と防衛体制について、連携強化の方針を表明している。

「サミット反対、戦争反対」

G7首脳らの式典が開かれている最中、平和記念公園に近い市内のアーケード通りでは、デモ隊が「サミット反対、戦争反対」と連呼していた。

G7各国はいずれも核兵器を持つか、核保有国と同盟関係にある。

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