クリス・ベヴァン、BBCスポーツ、ハリファ国際スタジアム(カタール・ドーハ)
今回のワールドカップ(W杯)で得られた予想外の教訓で、ここまででおそらく最大のものは「日本代表を見くびれば大変な目に遭う」だ。
次に日本と対戦するクロアチアよ、注意せよ。なぜなら、サムライ・ブルーはカタールの復活王として頭角を現しており、気迫に満ちた途中出場の選手たちが、すでに大物2チームを仕留めているからだ。
初戦において見事な挽回でドイツを破った日本は、続くコスタリカ戦ではあえなく敗退。ベスト16入りは望み薄で、ドイツに勝ったのはまぐれかと思わせた。
しかし、森保一監督率いるチームは1日夜(日本時間2日朝)、初戦で衝撃的な勝利を収めたハリファ国際スタジアムに戻ると、スペインを相手に再び見事な戦いを展開。グループEを予想外の1位で勝ち抜いた。
W杯史上、前半にリードを許しながら後半で逆転する試合内容で同一大会において2勝を挙げたのは、日本で3チーム目だ。1938年大会のブラジルと、1970年大会の西ドイツ(当時)以来のことで、日本は印象深い形でそれを実現した。
スーパーサブがまた決定的な仕事
日本は先月23日のドイツ戦で、2得点の両方を途中出場の選手が挙げた。そしてこの夜のスペイン戦でもまた、控えの選手が決定的な役割を果たした。違っていたのは、この夜の方がさらに素早く効果が表れたことだった。
「ここぞというタイミングで効果的な交代を行った」と、元イングランド女子代表GKのキャレン・バーズリー氏はBBCのラジオ5ライブで語った。「日本は手にしたチャンスを生かした」。
確かにそうだった。ドイツ戦では堂安律が、後半の途中から出場して4分ほどで同点ゴールを決めた。スペイン戦では堂安は、後半の最初から出場。すると3分もしないうちにペナルティエリア手前からシュートを放ち、得点した。
そのわずか142秒後には、後半の頭から入ったもう1人、三笘薫が貴重な仕事をした。堂安の低いクロスを、滑り込むようにしてゴール前に折り返し、田中碧のゴールをアシストしたのだった。
ただこの2点目が、物議をかもすのは明らかだった。三笘が追いつく前に、ボールはラインを割っていたように見えたからだ。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が介入した結果、ゴールは成立。一段とドラマが盛り上げったと同時に、多くの議論を引き起こした。
森保監督は試合後、現代サッカーには素晴らしいテクノロジーがあるとし、もしボールがラインの外に出ていたらゴールキックになっていたはずだと述べた。
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VARの判定が発表されたとき、スペインのサポーターたちは不満そうだった。そしてその後も、スタジアムの大型スクリーンを信じられないといったように見つめることになった。
同じ時間に別会場で行われていたコスタリカ対ドイツの試合で点数が動くたび、最新のグループ順位表が表示された。突破するチームと敗退するチームがころころ変わり、動きについていくのが難しい時間もあった。
日本のファンたちは、そうした目まぐるしい展開に付き合う必要はほとんどなかった。それでも、スペインがもう1点取れば、日本は決勝トーナメント進出が危うくなるという状況には置かれた。
日本代表で印象的だったのは、後半に入っての矢継ぎ早の攻撃もさることながら、リードを奪ってからの45分間近く、守備的な形にリセットして、スペインにほとんどチャンスを作らせなかったことだ。日本のボール保持率がわずか18%だったことを思うと、実に優れていた。
「日本は見事だった。本当に素晴らしかった」とバーズリー氏は付け加えた。
「規律正しく、組織的に動き、ゲームプランを理解して可能な限り実行した。それは大したことだ」
「1次リーグを通してその戦法とアプローチをとったことで、リーグ突破が可能となった」
「コスタリカにあのような形で負けたのは不思議だったが、大事なときにボールをゴールへ押し込んだ」
最高のW杯にできるか
会場にいて大勢の日本ファンにとって、この夜は忘れられない夜になった。しかし、もっと驚くような成績を夢見ることも可能だ。
日本がベスト16入りしたのはこれで4回目だ。しかしその先にはまだ進んだことがない。森保監督は、5日(日本時間6日)のクロアチア戦で新たな歴史をつくる決意でいる。
「サポーターの皆さん、国民の皆さん、本当に応援ありがとうございます」と、森保監督は試合後のインタビューで話した。
「試合を通して苦しい戦いだったが、選手たちは必ず自分たちはできると信じ続け、チーム一丸となって最後まで戦ったのがよかった」、「前半から出ていた選手たちがつないでくれて、後半にこの勝利につながった。みんなでつなげた勝利だ」
「順位的な新たな景色はベスト8だが、世界という舞台で戦って行けるという、違った新しい景色を選手たちは見せてくれていると思う。最後、ベスト8以上の新たな記録をつかみ取りたいと思う」
それが日本代表の次の目標だ。クロアチア戦でたとえリードされても、彼らがそのまま諦めたりしないことは、もう誰もが知っている。