ワールドカップ(W杯)カタール大会は5日夜(日本時間6日未明)、決勝トーナメント1回戦があり、日本は1−1からのペナルティーキック(PK)戦でクロアチアに敗れ、ベスト8入りを逃した。韓国も1-4でブラジルに敗退した。これでアジア勢は大会から姿を消した。
日本は今大会、初のW杯ベスト8を目標に掲げてきた。1次リーグで強豪ドイツとスペインを破り、2大会連続4回目の決勝トーナメントに進んだが、宿願を達成できなかった。
これで日本は7回出場のW杯はすべて、1次リーグ最下位敗退(1998、2006、2014年)か、決勝トーナメント1回戦敗退(2002、2010、2018、2022)のどちらかとなった。
アジア勢は、日本と韓国がこの日そろって敗退したほか、オーストラリアが3日にアルゼンチンに敗れており、すべていなくなった。
前回大会準優勝のクロアチアと、今大会優勝候補のブラジルは、9日(同10日)の準々決勝で対決する。
前田が先制点
アル・ジャヌーブ・スタジアムで午後6時(日本時間6日午前0時)に始まった日本対クロアチアの試合は、多くの時間でクロアチアがボールを支配。日本がプレスをかけてボールを奪い、素早い攻めに転じる展開となった。
序盤から両チームに決定的な得点機が訪れたが、ともに決め切れなかった。
クロアチアは8分、イヴァン・ペリシッチは日本のゴール前でGK権田修一と1対1の状態でシュートを放ったが、権田がこれをブロックするファインプレーを見せた。
日本は12分、伊東純也が右サイドから絶妙のクロスを入れたが、ゴール前中央に走り込んだ前田大然も、奥に走った長友佑都も、わずかにボールに足が届かなかった。
均衡が破れたのは前半43分だった。日本は右サイドでコーナーキックを短く出すと、堂安律がクロスを入れた。ボールはゴール前で主将の吉田麻也に当たってこぼれ、前田大然がそれを左足で押し込み、先制点を挙げた。
ペリシッチが同点ゴール
日本は今大会初めて、リードして後半を迎えた。しかし、守りに入ることなく、再開直後からテンポよく攻め上がった。
だが、得点チャンスを確実にものにしたのはクロアチアだった。
後半10分、右サイドからデヤン・ロヴレンが長いクロスを入れると、ゴール前でイヴァン・ペリシッチが頭で合わせた。ボールはゴール右端に吸い込まれ、クロアチアは同点に追いついた。
ペリシッチはこれで、W杯3大会連続でゴールを決めた4人目の選手となった。主要大会での得点は通算10点目。
後半はクロアチアのペースで進んだ。元マンチェスター・ユナイテッドGKのピーター・シュマイケル氏は、「クロアチアが完全に試合を支配しており、守りもよくなっている」とBBCのラジオでコメント。
「(クロアチアは)これまでの経験が生きていると思う。日本は(後半20分ごろからの)10〜15分間、何もつくり出せていない」と付け加えた。
後半は1−1のまま終了。今大会最初の延長戦に入った。
クロアチア、W杯のPK戦で負け知らず
前後半15分ずつの延長戦は、前半終了間際、三笘薫がドリブルで長い距離を攻め上がり、強烈なシュートを放った。しかし、GKドミニク・リヴァコヴィッチの正面に飛び、はじき返された。
クロアチアも後半アディショナルタイムにロヴロ・マイェルがゴールを狙ったが、枠を捉えられなかった。
双方が得点できないまま、延長戦が終了。勝敗は5人ずつがPKを蹴り合う、PK戦で決することとなった。
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先攻の日本は、1人目の南野拓実と2人目の三笘が立て続けにGKリヴァコヴィッチに止められ、ピンチに陥った。
クロアチアは3人目のマルコ・リヴァヤが左ポストに当てて外したが、日本4人目の吉田麻也のシュートもリヴァコヴィッチがブロック。クロアチア4人目のマリオ・パシャリッチがボールをネットに沈めて、勝利が決まった。
W杯のPK戦で1人目と2人目のシュートを連続して止めたGKは、リヴァコヴィッチが初めて。
クロアチアはこれで、W杯でのPK戦は3戦3勝となった(2018年大会でデンマークとロシアに勝利)。一方、日本は2戦2敗となった(2010年大会でパラグアイに敗退)。
W杯のPK戦はこの試合までの過去6戦、すべて後攻が勝っていた。この日もそのジンクスは破られなかった。
現地で取材するBBCスポーツのシャムーン・ハフェズ記者は、クロアチアは豊富な経験から、この日のような試合での勝ち方を知っていたと説明。
クロアチアは前回大会で、決勝トーナメント1回戦から準決勝までの3試合すべてを延長戦の末に勝利しているとした。また、W杯と欧州選手権(ユーロ)で戦った決勝トーナメント8試合では、7試合が延長戦に突入していたと紹介した。
この試合のボール保持率は、クロアチアが58%、日本は42%だった。
「願い続ければ越えられる」
試合後、フジテレビで放送されたインタビューで、森保一監督は、「ベスト16の壁は今回も乗り越えられなかったが、選手たちは新時代を見せてくれたと思う。これから先、日本のサッカーが最高の景色を願い続ければ、必ずこの壁は乗り越えられると強く思う」と話した。
そして、「ドイツに勝ち、スペインに勝ち、W杯のチャンピオンに勝ったということを自信として、追いつけではなく追い越せを考えていけば、必ず(日本のサッカーの)未来は変わると思う」とした。
主将の吉田麻也は、「毎日この壁を破るために4年間いろんなものを取り入れて、チャレンジしてやってきたつもりだったが、結果が最後に出なくて本当に悔しい」と心境を表現。
「多くの子どもたちがこの試合を見て、サッカーに夢をはせてときめいて、サッカー選手になりたいと思う子たちが増えて、その子たちがいずれW杯に出てこの壁を破ってくれることを期待している。(中略)自分もそれに貢献していきたい」と語った。
元イングランド代表DFのリオ・ファーディナンド氏は、日本代表について、「彼らは今大会、これまでしたことのなかったことをやり遂げたのだから、成果を誇りに思うべきだ。未来に向けて力をつけ、一段と強くなってまた戻ってくると確信している」とBBCの番組で述べた。
元マンチェスター・ユナイテッドのシュマイケル氏は、「日本代表は素晴らしいパフォーマンスを見せたと思う。ドイツをあのように倒し、スペインをここぞという時に破った。自分たちが成し遂げたことを誇りに、胸を張って日本に帰ってほしい」とBBCのラジオでコメントした。
ブラジルが韓国を圧倒
スタジアム974であったブラジル対韓国の試合は、ブラジルが圧倒的な攻撃力で前半に4点を獲得。2点目のPKを決めたネイマールは、これが自身の代表通算76ゴール目で、伝説的存在のペレ氏がもつ同国の最多記録にあと1点に迫った。
韓国は後半31分、途中出場のペク・スンホが豪快なミドルシュートをゴールに叩き込み、1点を返した。