日米首脳会談、日本製鉄のUSスチール買収計画に「代わりに多額の投資」すると発表

著者 坂本 佳代

ドナルド・トランプ米大統領は7日、訪米中の石破茂首相とホワイトハウスで会談した。記者会見でトランプ大統領は、日本製鉄が米鉄鋼大手USスチールの買収を断念し、代わりに「多額の投資」を行うと発表した。

日本製鉄は2023年にUSスチールを149億ドル(約2兆3400億円)で買収する計画を発表したが、ジョー・バイデン前政権は今年1月、国家安全保障上の理由からこの買収を阻止する命令を出した。

日本製鉄とUSスチールは現在、この件についてアメリカ政府を提訴している。

トランプ大統領は今回、新日鉄を「ニッサン」と誤って呼びながらも、来週にも新日鉄のトップと会い、「仲介と仲裁」を行うと発表。また、新日鉄がUSスチールの過半数株式を取得しないまま「多額の投資」すると述べた。

石破首相も、「買収ではなく投資だ。どちらかが利益を得るような一方的な関係にならないことを、大統領との間で強く認識を共有した」と話した。

この会見では、それ以上の合意の詳細は共有されなかった。

この買収については、バイデン政権がアメリカの鉄鋼業界や労働組合からの圧力を受け、日本製鉄のUSスチール買収を阻止し、国内での所有が望ましいとしていた。トランプ氏も買収を繰り返し批判していた。買収が実現すれば、世界最大級の鉄鋼会社が誕生する。

新日鉄は長い間、USスチールに投資するつもりだと強調している。最近では、この買収計画がトランプ氏の製造業や雇用創出、アメリカへの投資促進を重視する施策と「一致している」と主張している。

トランプ氏との関係強化に腐心

石破首相は今回、日本の主要同盟国との関係を強化するためにワシントンを訪れた。

日米の政府関係者は、今回の訪米の主な目的は、トランプ大統領との個人的な関係を築くことだと述べた。トランプ大統領は2017~2021年の最初の任期中に、ゴルフを通じて安倍首相と親交を深めた。安倍氏は2020年に辞任し、2年後に暗殺された。

石破首相は、第2次トランプ政権で最初にホワイトハウスを訪れたアジアの首脳となった。

新政権下での外国指導者の訪問は、今週初めのイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に続いて2人目となる。

石破首相は共同記者会見で、トランプ大統領について「テレビで見ると声高で、かなり個性強烈で、恐ろしい方だという印象がなかったわけではない」と話したうえで、「実際に会うと本当に誠実な、力強い、米国や世界に対する強い使命感を持たれた方だということを、お世辞を全く抜きに感じた」と述べた。

日本政府関係者は、石破氏がトランプ大統領との会談に向けて「あらゆる準備」を行ったと述べた。ファースト・レディー(大統領夫人)のメラニア・トランプ氏の招待で就任式に出席した安倍氏の妻・明恵氏や、岸田文雄前首相などから助言を求めたという。

石破氏はまた、日本がアメリカにとって主要な経済パートナーだと強調。5年連続でアメリカへの最大の外国投資国だと述べた。

多国籍企業の中で、日本企業は10州で最大の雇用創出者で、他の6州でも2番目に大きな雇用創出者となっている。

たとえばケンタッキー州だけでも、日本企業は主に自動車部品製造業で4万5000人以上を雇用している。

日本への関税の可能性は

トランプ大統領はこの日、日本に対する関税の可能性は依然としてあるものの、680億ドルの対日貿易赤字は解消できると述べ、「日本にとって非常に簡単なことだ」と語った。

「我々は素晴らしい関係を持っている。問題はないと思う。日本も公平を望んでいる」と述べた。

アメリカの関税と対抗関税の可能性について尋ねられた石破氏は、詳細を明らかにせず、「『仮定の質問にはお答えいたしかねます』というのが、日本の定番の国会答弁です」と述べて笑いを誘った。

これに対しトランプ氏は、「とてもいい答えだ。すごい、なんていい答えなんだ。すごく上手だ」と述べた。

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