英海軍の哨戒艦が台湾海峡を通過、「挑発行為」と中国が批判

著者 西田 遥

中国軍は20日、イギリス海軍の哨戒艦「HMSスペイ」が18日に台湾海峡を通過したことについて、「地域の平和と安定を損なう」「意図的な挑発行為」だと批判した。

英王立海軍は、今回の航行は長期にわたり計画されてきた展開の一環で、国際法に沿って行われたと説明している。

英軍艦艇が台湾海峡を通過したのは2021年以来4年ぶり。英空母打撃群が、同地域で数カ月間展開するために到着したタイミングだった。

中国は台湾について、最終的には自国の一部となるべき分離した省とみなしており、そのための武力行使の可能性を排除していない。一方、台湾は自らを主権国家とみなしている。

中国は、イギリスがHMSスペイの航行を公然と「誇大に宣伝している」と批判。イギリスの主張は「法的原則をゆがめ、市民の誤解を招く試み」だとした。

「このような行動は、台湾海峡の情勢を混乱させ、平和と安定を損なわせる、意図的な挑発だ」

そして、HMSスペイのすべての航行を監視しているとし、中国軍が「あらゆる脅威と挑発に断固として対処する」と付け加えた。

一方、台湾外交部は英哨戒艦の航行について、台湾海峡における航行の自由を守る行動だと称賛した。

英艦艇の台湾海峡通過は4年ぶり、緊張高まる中台関係

台湾海峡では、米海軍艦艇による「航行の自由作戦」が定期的に実施されているが、英海軍艦艇による通過は、2021年にヴェトナムに派遣された「HMSリッチモンド」以来。

当時も、中国が強く反発し、艦艇の監視のために中国部隊が派遣された。

HMSスペイはインド太平洋地域に常駐する2隻の英海軍艦艇のうちの一つ。

同艦は、英航空母艦HMSプリンス・オブ・ウェールズをはじめとする空母打撃群が、8カ月間の任務のためにインド太平洋地域に到着したタイミングで、台湾海峡を通過した。

キア・スターマー英首相は、今回の空母打撃群の展開は「今世紀最大規模の派遣の一つ」で、「敵対勢力には力強いメッセージを、同盟国には団結と決意のメッセージを送るものだ」と述べた。

今回の派遣には、約4000人の英軍関係者が参加している。

空母打撃群は軍事作戦や訪問を通じて30カ国と連携し、アメリカやインド、シンガポール、マレーシアと演習を実施する。

台湾では昨年5月、対中強硬姿勢を掲げる頼清徳氏が総統に就任。その後の1年間で、台湾海峡をめぐる中国と台湾の緊張は高まり続けている。

頼氏は中国を「外国の敵対勢力」と位置づけ、台湾における中国の影響力工作を排除する政策を打ち出している。

一方、中国側は、台湾海峡で頻繁に軍事演習を行っている。4月には、台湾の主要な港やエネルギー施設への攻撃を想定した実弾演習を実施したと主張した。

中国軍はこのところ、日本近海でも活動を続けている。

中国海軍の空母「山東」と「遼寧」の2隻が、数週間にわたり、太平洋上の海域で同時に演習を行ったことが確認されている。これは前例のない動きだ。

両艦からは戦闘機が数百回発着した。うち数機は海上自衛隊の哨戒機に接近し、日本政府が中国側に「深刻な懸念」を表明した。

17日夜には日本の防衛省が、中国海軍艦艇の直近の動向を公表するという、異例の対応を取った。

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