羽田空港で日本航空機が炎上、海保機と衝突 乗客乗員379人全員脱出と

著者 大西 秀樹

東京都大田区の羽田空港で2日午後5時50分ごろ、着陸した日本航空(JAL)の旅客機が滑走路で海上保安庁の航空機と衝突し、炎上した。岸田文雄首相は同日午後9時前、記者団に対し、乗客乗員379人全員が機体から脱出したことと、海上保安庁機の乗員6人のうち5人が死亡したことを明らかにした。海上保安庁機JA722A機は、能登半島地震の支援に向かおうとしていたという。

炎上したのは日本航空のJAL516便。午後4時に新千歳空港を出発し、午後5時40分に羽田に着陸する予定だった。NHKなど複数メディアは、日本航空の話として、乗客乗員379人全員が機体から脱出したと伝えた。乗客は367人で、うち8人が子どもだという。

日本航空は2日夜、「本日1月2日夕刻、当社のJAL516便が羽田空港に着陸した際、海上保安庁の航空機と接触し滑走路上で炎上しました。お亡くなりになられた海上保安庁の関係者の方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。当社便にご搭乗されていたお客さま、乗員は全員脱出したことを確認しております」とコメントした。

首相官邸は、海上保安庁JA722A機とJAL516便が衝突したとし、岸田首相が、「1. 関係省庁、関係機関の緊密な連携のもと、被災者の救出・救助活動に全力を尽くすこと 2. 早急に被害状況を把握するとともに、国民への適切な情報提供に努めること」を指示したと発表した。

岸田首相は午後9時前に首相官邸で記者団に対し、日航機の乗客乗員が無事だったことと、海上保安庁機の乗員6人のうち5人が死亡したことを明らかにした。首相は、海上保安庁の乗員たちが能登半島地震の支援へ向かうところだったと説明。「大変残念なことで、その使命感に敬意と感謝を表し、哀悼の誠をささげる」と述べた。

事故原因は

国土交通省と海上保安庁は2日午後9時過ぎに記者会見し、海上保安庁機の乗員6人のうち5人が死亡したことと、機長が負傷しているが意識があることを明らかにした。海保の瀬口良夫次長は「ご迷惑をかけた皆様に深くおわびする」としたうえで、「かけがえのない職員の命を失ってしまったことは、痛恨の極み」と述べた。国交省の平岡成哲航空局長は事故状況について、「C滑走路に南側からJAL機が着陸しようとしていた。滑走路上に海上保安庁の機体があり、そのまま衝突した。どういう形で衝突をしたのか、詳細はまだ確認できていない」と話した。

複数報道によると、日本航空は3日未明に記者会見し、乗員から聞き取った内容として、日航機機に対する管制からの着陸許可を認識し、復唱した後に着陸操作を実施したと発表した。

国土交通省は3日、管制官とJAL516便や海保JA722A機との交信記録を公表した。それによると、海保機に対して滑走路への進入指示は出ていなかった様子。管制塔が「JA722A、東京タワー、こんばんは。1番目、C5上の滑走路停止位置まで地上滑走してください」と指示したのに対して、海保機は「滑走路停止位置C5へ滑走します。JA722A、1番目。ありがとう」と答えている。滑走路停止位置は、滑走路手前の誘導路にある。

一方で朝日新聞などの報道によると、海保機の機長は事故直後、「管制官から離陸許可が下りていたという認識だった」という趣旨の内容を話していたという。

事故について専門家は

英キングス・コレッジ・ロンドンのアレッシオ・パタラノ教授はBBCに対して、「日本の滑走路のほとんどがそうだが、羽田空港も同様だ」として、「自衛隊や緊急対応のフライトが最優先されるのは、きわめて極端な事態に限られている。そのため、民間機と滑走路を共有しなくてはならない」のだと話した。

英クランスフィールド大学で交通システム研究を主導するグレアム・ブレイスウェイト教授(事故原因調査)は、燃え上がる日航機が滑走後に停止した映像を見ながら、「衝突によって左側のエンジンが衝撃を受けたことで、燃料ラインが破裂したようだ」と解説。「その時点で巨大な火の玉が上がり、それ以降は燃料漏えいが続いているようだ。燃料が機体から流れ落ち続けることで、非常に厳しい事態になる」と説明した。

「脱出可能になってすぐに乗務員たちは非常扉を開いたはずで、それによって脱出シューターが自動的にふくらんだはずだ」、「客室の座席その他の材料は防火素材でできているが、燃えないわけではない。それでも、あの量の燃料であれほど激しい炎が燃え上がったのは意外だった」と教授は話した。

教授はさらに、「どの空港でも救急消防隊は3分以内にどの場所にも到達できるよう待機していて、実際の機体到達目標時間は2分だ。第一に、脱出を妨げるような炎の消火が優先される。旅客機は設計段階で、脱出口が半分しか使えない状態でも、90秒以内に全員が脱出できるよう設計されている」と解説した。

機体が保たれたことが脱出を可能に=専門家

衝突したJAL機はエアバス「A350」。2人の航空専門家はBBCニュースに、機体の主要構造が保たれたことで、乗客乗員379人の脱出が可能になったと話した。

元パイロットのアラステア・ローゼンシャイン氏は、A350が別の飛行機と「非常に強く衝突」したにもかかわらず機体が崩壊しなかったことで、日航機の機長たちは滑走路で停止させることができたのだろうと指摘した。

ローゼンシャイン氏によると、A350はカーボンファイバーなど強力な新素材で造られているため、燃え続ける炎にも長時間にわたり耐え続け、そのことも乗客乗員の脱出を可能にしたと話した。

旅行アナリストのサリー・ゲシン氏は、航空機の枠組み設計では軽量化と強度の維持が課題なのだと説明。それだけに、全員が脱出できるまでA350が構造の一体性を維持したことは「まったく信じられない」として、その「強靭さ」を証明したと述べた。

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