北朝鮮が中距離弾道ミサイル発射か 日本上空を通過し太平洋へ

著者 藤原 直人

北朝鮮は4日、中距離弾道ミサイルとみられるものを日本北部の方向に発射した。日本政府によると、発射から約20分間、4000キロ以上飛行し、日本列島の東約3000キロの太平洋に落下した可能性があるという。

NHKなど複数報道によると、日本の防衛省は同日午前7時25分すぎ、北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたと発表した。「Jアラート」(全国瞬時警報システム)によると、ミサイルは北海道や青森県方向へ向かい、同29分ごろに太平洋へと上空を通過した。海上保安庁は同45分ごろ、すでに落下したとみられると発表した。

首相官邸はツイッターで午前7時27分の時点で、北海道や東京都を対象に、「ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中、又は地下に避難して下さい」と呼びかけた。同42分の時点では北海道と青森県を対象に、「ミサイル通過。ミサイル通過。先程のミサイルは、07時29分頃、太平洋へ通過したものとみられます。不審な物を発見した場合には、決して近寄らず、直ちに警察や消防などに連絡して下さい」と発信した。

韓国軍の合同参謀本部は、北朝鮮が午前7時23分ごろに、中距離弾道ミサイルと推定される1発を北部から東に向けて発射したと発表した。

北朝鮮が、日本上空を通過する形で弾道ミサイルを発射するのは、2017年9月15日以来。

岸田文雄首相は首相官邸で記者団に対し、「先ほど北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、我が国上空を通過し、太平洋上に落下したとみられる。最近の度重なる弾道ミサイルの発射に続く暴挙であり、強く非難する」と述べた。さらに、「ただちにNSC(国家安全保障会議)を開催し、情報の集約・分析に努めたい」とも話した。

アメリカのダニエル・クリテンブリンク国務次官補(東アジア・太平洋担当)は、北朝鮮の今回の発射決定について「残念」だと遺憾の意を示した。

北朝鮮によるミサイル発射は9月下旬から数えて5回目。9月25日に1発、28日に2発、29日に2発、10月1日に2発が確認されている。

国連安全保障理事会は北朝鮮に対して、弾道ミサイルおよび核関連活動を停止し、核実験などの挑発を行わないよう義務付けている。

しかし北朝鮮の最高人民会議は9月8日、自分たちは核兵器保有国だと公式に宣言する法令を採択した。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記はこの時、この決定は「不可逆的」だとし、非核化交渉の可能性を排除した。

国際社会からの度重なる制裁を受けながらも、北朝鮮は2006年から2017年の間に核実験を6回繰り返してきた。

今回のミサイル発射は、金総書記をもっぱら無視してきた日本とアメリカ両政府の意識を引き付けるため、北朝鮮が意図的に事態のエスカレーションを狙ったものとみられる。

事前の通告や相談なしに他国の上空にミサイルを飛ばす行為は、国際規範に真っ向から抵触するもので、きわめて挑発的なものだ。攻撃と誤認されやすいだけに、ほとんどの国は実施しない。

北朝鮮のミサイル発射実験は多くの場合、通常よりも角度を上げて一気に高く打ち上げる「ロフテッド軌道」を描いて行われる。その場合、近隣諸国の上空通過を避けられる。

しかし、北朝鮮の核問題に詳しい米カーネギー国際平和財団のアンキット・パンダ上級研究員はロイター通信に、日本の近くもしくは日本の上空へ向けて発射することで、北朝鮮の科学者たちはミサイルを「実際に使用した場合の条件に近い状態」で試すことができると話した。

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