新型コロナウイルスの感染拡大により経済回復が妨げられるとの懸念から、世界各地の株式市場で株価が下落している。
アジアでは20日、東京株式市場の日経平均株価が5日続落。午前中には一時、下げ幅が300円を超え、過去6カ月で最安値を記録した。終値は前日比264円58銭安の2万7388円16銭だった。
19日のニューヨーク株式市場では、ダウ平均株価が2%以上下落。イギリスなど欧州でも主要株価指数が軒並み下がった。
新型ウイルスのデルタ株により、各国で感染者が増加傾向にある。
日本ではデルタ株の流行に加え、オリンピックが医療状況を悪化させるのではないかとの懸念が株価に影響している。
一方イギリスでは、国民保健サービス(NHS)のCOVID-19検査・追跡アプリで濃厚接触者に認定された人々が自主隔離を行っており、これが人手不足につながっている。産業界は、営業時間の短縮や休業、生産減などを強いられていると訴えている。
「パンデミック以前に戻るかは疑問」
投資会社AJベルのラス・モールド投資ディレクターは、「市場が最も心配しているのは、世界経済の回復が遅れるのかどうかだ」と述べた。
ハーグリーヴス・ランズダウンの上級投資・市場アナリストのスザンナ・ストリーター氏はイギリスの状況について、「ほんの数週間前に見えていた楽観主義が再び暗雲に覆われている。特に、フランスからの帰国者に10日間の隔離が義務付けられたことが大きい」と指摘。
「9月までに1日の感染者数が20万人に達すると警告する科学者もおり、秋にはまたロックダウンが始まる雰囲気が出てきている」と分析した。
独コメルツバンクで外国為替・コモディティー調査主任を務めるウルリッヒ・ロイチュマン氏は、「ワクチン接種率が上がっているものの、パンデミック以前の状態に戻るかは疑わしくなってきた」と語った。
アメリカではインフレ懸念も
こうした中、ジョー・バイデン米大統領は19日に記者会見の場で、経済活動を続けるためにもワクチンを接種するよう国民に呼びかけた。
アメリカでもデルタ株による感染が拡大している。ロサンゼルスで屋内でのマスク着用義務が再開されたことをきっかけに、投資家に懸念が広がった。
19日にはダウ平均株価が2.1%下がり、今年に入って最大の下落を記録した。ハイテク株比率が高いナスダック総合指数も1.1%落ち込んだ。
バイデン大統領は市場の動きについて、「それは私が経済成長を判断する方法ではない」と述べた。
アメリカでは6月、中古車と食品の値上がりにより、消費者物価指数(CPI)がさらに上昇。2008年以来の高い伸びを示した。
バイデン氏は、インフレ率の上昇は一時的なものとみていると述べた上で、長期的なインフレ率の上昇が経済にとって「本当の困難」になることは理解していると語った。