大井真理子、ビジネス記者
日本の飲料大手キリンホールディングスは27日、オーストラリアで健康食品を手掛けるブラックモアズを買収すると発表した。18億8000万豪ドル(約1700億円)で全株を取得し子会社化する。
日本でアルコール飲料の販売が低迷し、規制も強化される中、キリンはヘルスケア部門の拡大を狙う。
キリンは、今回の買収は「当社の『ヘルスサイエンス事業』を強く補完するもの」だとしている。
一方のブラックモアズも、新型コロナウイルスのパンデミック以降の売り上げ低迷から脱却を図る。
同社はパンデミック以前、外国にいる中国人が物品を購入して自国に送る「代購(代理購入)」で商品が売れ利益を得ていた。
ブラックモアズのウェンディー・ストップス会長は、「キリンの買収スキームは魅力的な現金取引だ」と説明している。
キリンにとっては、今回の買収はアルコール飲料以外の事業多角化の一環となる。
若者の生活様式の変化などから、日本ではビールの販売量が落ちている。日本政府は昨年、税収減を懸念し、若年層向けにアルコール需要を喚起するキャンペーンを公募した。
一方で世界保健機関(WHO)は、アルコール飲料業界にはより厳しい規制が必要だと訴え、各国政府に値上げや消費抑止を呼びかけている。
ヘルスケア分野に注力
世界的にはビールで知られるキリンだが、日本国内では非アルコール飲料や砂糖不使用の飲料なども展開している。
ヘルスケア事業にも取り組んでおり、2019年には化粧品・サプリメント大手ファンケルと提携を結んだ。
キリンは先に、2020年代末には、ヘルスケア事業で年間5000億円の売り上げを達成したいと述べている。
ブラックモアズの株式取得は8月に完了する見込み。この取引は創業者の孫で18%株式を保有しているマーカス・ブラックモア氏からも支持を得ている。
買収計画の発表後、同社の株価は20%以上上がり、過去7年超で最高値を記録した。