サッカーの女子ワールドカップ(W杯)は5日、ノックアウトステージ(決勝トーナメント)の試合があり、日本は3-1でノルウェーに勝って準々決勝に進んだ。ベスト8入りは、準優勝した2015年カナダ大会以来。
この日の試合は、ニュージーランドのウェリントン・リージョナル・スタジアムで午後8時(日本時間同5時)に始まった。今大会はオーストラリアとニュージーランドの共同開催。
世界ランキングで互角のチーム同士の対決(日本11位、ノルウェー12位)。ただ、日本はグループステージ(1次リーグ)で、グループCを3連勝で首位通過し、勢いに乗っていた。それに対してノルウェーは1勝1分1敗と、グループAを苦しみながら2位で通過していた。
違いは、序盤から明らかだった。ノルウェーが自陣で守りを厚くしていたこともあり、日本は多くの時間でボールを保持し、繰り返しノルウェーのゴールに襲いかかった。ノルウェーはカウンター攻撃を成功させて前半を同点で乗り切ったが、後半に点差をつけられた。
日本は、6日にあるスウェーデン(世界ランキング3位)対アメリカ(同1位)戦の勝者と、11日にニュージーランド・オークランドのイーデン・パークでベスト4進出をかけて戦う。
日本が初の失点
先制点は前半15分。ノルウェーのオウンゴールだった。
日本のMF宮澤ひなたが左サイドからクロスを入れると、ノルウェーのMFイングリット・シルスタッド・エンゲンがこれをクリアしようと足を伸ばした。足先がボールに当たると、わずかにコースが変化。そのままGKミカルセン・アウロラの手をかすめるように、ゴール左端へと転がった。
思わぬ形で失点したノルウェーだったが、すぐに追いついた。
前半20分、右サイド深くに出たボールを、MFヴィルデ・ボー・リサがゴール前に浮いたボールで折り返した。これをMFグーロ・レイテンが、日本の選手に挟まれながら頭で合わせ、ゴール左上へとボールを送り込んだ。
日本にとって、今大会初の失点となった。
日本は前半、ボール支配率でノルウェーを圧倒。たびたびゴール前で決定機をつくったが、シュートがブロックされたり、枠を捉えられなかったりし、2点目を挙げることができなかった。
宮澤が5ゴール目決める
後半5分、日本がようやく追加点を奪った。
ノルウェーのゴール前で混戦から、相手がペナルティーエリア右側でパスをミス。これにDF清水梨紗が素早く反応し、右足でゴールに押し込んだ。
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リードされて後がないノルウェーは、FWキャロライン・グラハム・ハンセンらを中心に激しい攻勢に出た。強烈なシュートを放つ場面もあった。
日本は押し込まれる時間が続いたが、後半36分、貴重な3点目が生まれた。
MF藤野あおばがセンターラインを越えて持ち上がり、縦パスを出すと、前方で宮澤が相手DFを振り切って、ボールを足元に収めた。GKミカルセン・アウロラと1対1となり、左足でコントロールよく、ゴール右側に流し込んだ。
これで宮澤は今大会5得点となり、最多ゴール(ゴールデンブーツ)争いのトップに立った。また、2011年大会で澤穂希さんがつくった日本人選手のW杯最多得点記録に並んだ。
ノルウェーは終了間際、高さを生かした攻撃を展開。FWカリーナ・セービックがヘディングで力強いシュートを放った。しかし、GK山下杏也加が反応よく左手1本でこれをはじき、ゴールを許さなかった。
BBCスポーツのゲイ・ローズ記者は、「1点目のヘディングでの失点を除き、日本はまたも強力な守備を見せた。まれに守備を破られても、山下が見事にセーブした」と伝えた。
この試合、ボール支配率は日本60%、ノルウェー40%だった。シュート数は日本が16本で、ノルウェーの2倍に上った。ただ、日本のシュートのうち枠内に飛んだのは4本で、正確性を欠いた。
「誰一人ネガティブでなかった」
試合後、日本の池田太監督はNHKで放送されたインタビューで、「最初少し攻めの糸口を見つけられないこともあったが、後半いろんな修正をして、追加点を奪って勝利につなげられたのはよかった」と、この日の展開を振り返った。
また、後半に入る前に選手たちに、「中盤の選手がボールを受けに下がってしまっていたので、もう少し前にいってもいいのではないか、サイドをうまく使えれば、ということも話した」と説明した。
そして、「ノックアウトステージのしびれる試合だが、自分たちがもっているものをどんどん出していく、アグレッシブに戦う、ということを(選手たちと)共有していた」と述べた。
勝ち越し点を挙げた清水は、「(ベスト16で敗退した)2019年で悔しい思いをしたので、まだまだこれからだが、ひとつ壁は破れたなという気持ちだ」と心境を表現。
ゴールについては、「自分のところにボールがこぼれてきて、前半はトラップせずに打って、次は落ち着いていこうと思っていたので、うまくゴールに入ってくれてよかった」と話した。
さらに、「1−1になったときも誰一人ネガティブなことがなかった。自分自身も、もう1点取るんだという気持ちでいた。本当にすごくいい雰囲気で試合をできたと思う。(中略)これからもどんどん勝ち上がっていきたい」と述べた。